老子(ろうし)
中国春秋時代の哲学者。諸子百家のうちの道家は彼の思想を基礎とするものであり、また、後に生まれた道教は彼を始祖に置く。「老子」の呼び名は「偉大な人物」を意味する尊称と考えられている。書物『老子』(またの名を『老子道徳経』)を書いたとされるがその履歴については不明な部分が多く、実在が疑問視されたり、生きた時代について激しい議論が行われたりする。道教のほとんどの宗派にて老子は神格として崇拝され、三清の一人である太上老君の神名を持つ。
史記の記述によると、老子は紀元前6世紀の人物とされる。歴史家の評は様々で、彼は神話上の人物とする意見、複数の歴史上の人物を統合させたという説、在命時期を紀元前4世紀とし戦国時代の諸子百家と時期を同じくするという考えなど多様にある。
老子は中国文化の中心を為す人物のひとりで、貴族から平民まで彼の血筋を主張する者は多く李氏の多くが彼の末裔を称する。歴史上、彼は多くの反権威主義的な業績を残したと受け止められている。
老子の名言格言
足るを知れば辱められず、止まるを知ればあやうからず。
天は万物を生みて所有せず、育ててこれを支配せず。
善人は不善人の師なり、不善人は善人の資なり。
真言は美ならず、美言は真ならず。
天の道は利して害せず、聖人の道は為して争わず。
優しくなりなさい。そうすれば勇敢になれる。つつましくなりなさい。そうすれば広い心を持てる。人の前を行かないようにしなさい。そうすれば人を導く者になれる。
足るを知る。
上善は水の如し。水は善く万物を利して争わず。
知る者は言わず、言う者は知らず。
つむじ風はひと朝と続かず、豪雨は一日と続かない。
困難なことは、それがまだ易しいうちに始めなさい。偉大なことは、それがまだ小さなうちにやりなさい。世界中の困難な問題も、かつては易しかったに違いない。偉大なことも、かつては取るに足らない小さなことだったに違いない。千里の旅も、第一歩から始まるのだ。
ただ自分自身であることに満足し、比較したり競争することがないのであれば、すべての人が君を尊敬するだろう。
他人を知るものは賢いが、自分自身を知るものは目ざめた人である。他人に打ち勝つものは強いが、自分自身に打ち勝つものは偉大である。
泥水もそのままにしておくときれいな水になる。
粘土をこねて作った器が役に立つのは、その器の中が空虚になっているからである。戸や窓の部分が開くように作った部屋が役に立つのは、戸や窓の空虚の所から出入りができるからである。
人に与えて、己いよいよ多し。
現実を現実として、あるがままに受け入れなさい。物事をそれが進みたいように、自然に前に流れさせてやりなさい。
魚を与えれば、一日食べていける。魚の取りかたを教えれば、一生食べていける。
敢えて天下の先とならず。
ものごとをまだ種のうちに見抜けるなら、それを天才という。
河や海が数知れぬ渓流の注ぐところとなるのは、身を低きに置くからである。その故に、河や海はもろもろの渓流に君臨することができる。
学を絶てば憂いなし。
千里の道も一歩から。
善く敵に勝つものは争わず。
不幸は幸福のうえに立ち、幸福は不幸のうえに横たわる。
賢者は財宝を貯えない。人に与えれば与えるほど、彼の財宝は豊かになる。
もっとも立派な武器はもっとも大きな悪をなす。知恵深き人は武器に頼ることはしない。彼は平和を尊ぶ。彼は勝っても喜ぶことをしない。戦勝を喜ぶことは殺人を喜ぶことを意味する。殺人を喜ぶような人は、人生の目的に達することはできない。
人生とは、その時々に自然に変化し、移りゆくものだ。変化に抵抗してはならない。それは悲しみを招くだけである。
善く人を用うる者はこれが下となる。
正しい言葉は聞こえがよくなく、聞こえがよい言葉は正しくない。
誰かを深く愛せば、強さが生まれる。誰かに深く愛されれば、勇気が生まれる。
白雁は白くなるために水浴びする必要はない。あなたも自分自身でいること以外に何もする必要はない。
取らんと欲する者は先ず与えよ。
大器は晩成す。
自分を是(ただ)しいとしないから、きわだって見える。自分でほめないから成功し、誇らないからいつまでももちこたえる。
人を知る者は智、自ら知る者は明なり。人に勝つ者は力あり、自ら勝つ者は強し。足るを知る者は富む。
怨みに報いるに徳を以てす。
道の道とすべきは、常の道にあらず。
優しい言葉をかければ、信頼が生まれる。相手の身になって考えれば、結びつきが生まれる。相手の身になって与えれば、愛が芽生える。
すべてのものの中でもっとも柔らかいものは、もっとも堅いものを打ち負かすことができる。なぜなら、形の無いものは隙間の無い所にも自由に入り込むことができるからだ。
功成り名遂げて身退くは天の道なり。
本当の親切とは、親切にするなどとは考えもせずに行われるものだ。
賢者は人の上に立たんと欲すれば、人の下に身を置き、人の前に立たんと欲すれば、人の後ろに身を置く。かくして、賢者は人の上に立てども、人はその重みを感じることなく、人の前に立てども、人の心は傷つくことがない。