草刈正雄の名言格言集

草刈正雄(くさかり まさお)

日本の俳優、モデル、歌手、司会者、タレント。

草刈正雄の名言格言

ドラマや映画の仕事もいただけるようになった頃、ドラマでご一緒した沢村貞子さんに「あんた、見てくれがいいんだから、そのぶん、3倍は腕を磨かないと、この世界から消えちゃうわよ?」と激励していただきました。その通りだと思いました。僕はモデル上がりで演技の基礎を勉強していない。それが、コンプレックスでした。だから、その裏返しで「二枚目」というレッテルがすごく嫌だった。

30代半ばを迎えた僕は低迷期に入りました。仕事が来なくなったんです。来たとしても主役ではなく、脇役。そして、さらに、どんどん小さな役になっていく……。でも、僕は俳優という仕事にしがみつきました。どんな役でもやりました。僕は下手な役者でしたが、この道でやっていくしかないという強い思いは宿っていたんです。

30代、40代で自己実現をできていないサラリーマンはたくさんいると想います。でも、皆さんにはやるべき仕事がある。仕事がなくて、屈折しているだけなら破滅的な人生になってしまうかもしれませんが、仕事があるなら大丈夫。その仕事にしがみついていれば、どうにかなる。しがみついていれば、転機はきっと訪れます。

テレビや映画の仕事が減っていった30代半ばの低迷期に、若尾文子さんに舞台やりなさいよ、と。いきなり舞台と言われても、いやぁ、こわかったです。僕のようなポッと出の俳優にとって、実力を問われる舞台に上がるのは覚悟をともなうことでした。実際、初舞台の『ドラキュラ その愛』では客席との距離の近さを感じて大変でしたが、どうにか舞台に立ち続けました。それが自分の自信になり、その後、フィルムに戻って演技をするときの糧にもなりました。

僕は40年間、俳優という仕事にしがみついてきました。それは、プロ意識だとか役者魂というようなカッコいいものではなく、自分には役者以外の仕事は何もできない、役者を辞めたら生きていけなくなるという必死さによるものでした。

僕、草刈正雄には、何をやるにも必ず、ついて回る代名詞がありました。「二枚目」です。要求される演技は常に正統派の二枚目。だんだんと「二枚目」という代名詞が自分に貼り付けられたレッテルのように感じられるようになり、窮屈になっていきました。「二枚目」を崩したいと思うあまり、勝手にコミカルな演技をして、プロデューサーを困らせたりもしました。